プラチナが豊富に存在するといっても、プラチナの塊が宇宙に浮いているわけではない。プラチナがM型小惑星にppmレベルで含まれているに過ぎないという事実は、スペースマイニング構想を決定的に破綻させるのである。
スペースマイニングは、小惑星帯にどのようにプラチナが存在するかを踏まえたうえで、プラチナを地球に持ってくることを考えると、技術的にとてもできそうにはない夢物語となる。
仮にプラチナが宇宙に浮いていてもやっぱりムリ
さらに、経済性を考えると、仮に宇宙にプラチナの塊が浮かんでいたとしても厳しいのではないか。
地球上ですら、大量に安価なものを輸送するものに航空輸送は向かない。宇宙間輸送になれば、地球上の航空輸送とは比べものにならないほどのエネルギーを要する。
ロケットを見れば、宇宙で仕事をする衛星は先端のほんの限られた部分で、大半は燃料タンクである。これは、宇宙で何かを飛ばすのには大きなエネルギーを要することを示す。
宇宙で採掘したものを地球に持ち帰って成立するには、よっぽど高価で重量が小さいものでないと成り立たない。
はやぶさ2を打ち上げたH2Aロケットの打ち上げコストはだいたい100億円、はやぶさ2の予算は300億円近い。100億円のプラチナはだいたい3トン、300億円では10トン。
しかし、小惑星帯より近いリュウグウに送り込めたはやぶさ2の重量は600キロ、回収してくるリュウグウのサンプルは数グラムである。
米国でははやぶさ2よりも大きな予算規模で、小惑星サンプル回収を目指すオシリスレックス計画を進める。
こちらは900億円かけ、最大2キログラムのサンプルを回収するそうだ(もっとも2キログラムは最大値で、NASAの資料では60グラムから2キログラムとなっている)。