その理由は、地球ができていく過程でプラチナが地表から地球内部に沈んでいってしまったからである。
地球の構造は、中心部に鉄から成るコアがあり、周囲を岩石から成るマントルが囲い、その上をマントルとは若干組成の違う岩石から成る地殻が囲んだものである。
できたての地球は、このような構造になっておらず、地表も宇宙の石の平均の組成と近いものだった。
しかし、ドロドロに溶けた初期の地球の内部で、徐々に比重の大きい鉄を中心とする金属が中心部に沈みコアになった。比重の軽い岩石質は表面近くに浮かび上がり、マントルと地殻になった。
こうした過程で、プラチナは地球化学的挙動が鉄に近いため、コアの方に取り込まれていった。これは、成り立ちが地球と似た、水星、金星、火星でも事情は同じである。
コアは地面からは数千キロ先である一方、人間が掘った一番深い穴は10キロ程度に過ぎない。
仮に、コアに達することができれば、高濃度のプラチナを含む金属が採り放題なのだが、現時点の技術では不可能である。
現状、深さ10キロ程度の穴しか掘れていないのに対し、はやぶさは小惑星に到達している。地球のコアより小惑星の方が到達しやすいのである。
幸い、宇宙には惑星のコアのようなものがむき出しで存在する。小さいものが隕鉄であり、大きいものがM型小惑星である。
太陽系ができた頃、一定以上のサイズの原始惑星でも、地球で起こったようなコアと地殻・マントルの分化が起こっていた。