長谷川:規制当局への働きかけで強烈に覚えているのは「ニボルマブ」のことです。当時、ニボルマブは、制度関連の問題で「承認されたけれども4〜5ヶ月使えない」という事態になっていました。その時、肺癌学会と患者連絡会が連名で要望書を提出したんです。そうしたら、すぐに改善されたんですよね。驚きました。

 その驚きには二つあって、一つは「国もがんばって早く承認をしてくれたのだけれど、制度の隙間に落っこちてしまうことがあって、国はそれに気付いていない」ということ。もう一つは「そういった問題にこちらから働きかければ対処してくれることもある」ということでした。やはり、患者だけでなく学会と一緒に働きかけることができたことがよかったのだろうと思います。

光冨:学会の役目の一つとして、医療行政について専門家の立場で意見を述べることは積極的にするようにしています。行政の方とお話をしてみると、やはり “背中を押してもらう”ことは国としてもありがたいと言われます。そこに患者さんの声が含まれていると、根拠になりやすいとのことでした。

 そのほかにも、連名でたくさんの要望書を提出しましたよね。そのためかどうかは断定できないとしても、結果的に要望どおりになったこともありました。「コラボレーションによって成果を出した」ということの意味は大きいと思います。

――市民公開講座などを一緒に開催されることもありますね。

光冨:参加されたみなさんは、患者さんのお話だからこそ重く受け止めたり、勇気付けられたりすることもあると思います。医療従事者向けのセミナーでも、参加者を感動させているのは長谷川さんたち。私たちはかないません(笑)。多くの医療従事者は患者さんのまとまったお話を聞く機会がないですし、すごく勉強になっていると思います。

長谷川:そう言っていただけてうれしいです(笑)。私も、「市民公開講座を一緒に開いてくれる」「学会に勉強の場を作ってくれる」「要望書を一緒に出してくれる」、という先生方の姿勢に、とても勇気付けられています。

世界の中の日本の医療、そして長谷川さんが感じた「医師の影なる努力」とは?

――様々に好循環を生んでいるお二人の活躍の場は、世界にも広がっています。光冨先生は、世界肺癌学会の次期理事長に就任されます。長谷川さんは世界肺癌学会のペイシェントアドボカシーアワードを受賞されました。お二人とも、おめでとうございます。