国際法違反との批判、経済再建は不透明
トランプ政権は軍事侵攻の前に米国内の石油メジャーにベネズエラへの投資を打診したと言われていますが、今のところメジャー側から積極的な意向は示されていません。特にオリノコ地域の超重質油は精製が難しく、そのための施設整備には10年ほどかかるとされ、莫大な資金も必要になるからです。
企業にとっては外国でビジネスを展開する上でその国の政情が安定していることが、大きな条件となります。ベネズエラは大統領が米軍に拘束され、米国に移送された状態。ベネズエラ国内では「アメリカの帝国主義を許さない」という反発は強く、米国内でも今回の軍事行動に反対する声は小さくありません。
トランプ政権は、当面はベネズエラを「運営」すると宣言しましたが、その具体策も示されていません。
米国のベネズエラ攻撃は国際法違反として批判を免れないでしょう。いかなる国の政治的独立に対する武力行使をも禁じた国連憲章に反するだけでなく、大統領と妻を拘束、移送したことは何人にも身体の自由を保障する国際人権規約B規約にも違反するとの指摘が出ています。
中国、ロシアだけでなく、中南米、欧州諸国からも批判が湧き上がり、米国の孤立感が際立っています。
ベネズエラの再建が思うように進まなければ、トランプ政権が目指す石油権益の確保も進まないでしょう。トランプ政権、ひいては米国が被る経済的・政治的代償は想像以上に大きくなる可能性も否定できないのです。
西村 卓也(にしむら・たくや)
フリーランス記者。札幌市出身。早稲田大学卒業後、北海道新聞社へ。首相官邸キャップ、米ワシントン支局長、論説主幹などを歴任し、2023年からフリー。日本外国特派員協会会員。ワシントンの日本関連リサーチセンター“Asia Policy Point”シニアフェロー。「日本のいま」を世界に紹介するニュース&コメンタリー「J Update」(英文)を更新中。
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