だから次のWBCで米国が狙うのは、単なる優勝トロフィーではない。「野球の中心は米国である」という物語の回復であり、そのために必要なのが「ショウヘイ・オオタニを倒す」という結末なのだ。

日本は前回と同程度の熱量では勝ちきれない可能性が

 もちろん侍ジャパンには大谷、同じドジャースの山本由伸ら日本人メジャーリーガーが続々と参戦表明し、世界一連覇へ向けて臨戦態勢が整いつつある。しかし米国がここまで勝ちに来るなら、日本も「前回と同じ温度」で勝ち切れるとは限らない。競技力の上積みというより、相手の“本気の構造”が変わっている。

 前回大会は、侍ジャパンが世界一になった。そしてその勝利は、結果として「大谷翔平という世界的象徴」を完成させた。次回大会は、その象徴を米国側が奪い返しに来る大会になる。

 WBCは、もはや国際大会という枠を超えつつある。覇権、象徴、ビジネス、そして国威。その全てが同時に動く“地政学的戦場”になった。2026年3月、米国代表が過去最強と目される布陣を結ぶのは、偶然ではない。日本を倒すため。ショウヘイ・オオタニを倒すため。そして、野球の物語を取り戻すための戦いである。

 勝敗の先にあるのは、トロフィーではない。「誰がベースボールの中心か」という、次の時代の答えだ。