米国が「勝ちに行かねばならない理由」
だが、ここで一度立ち止まって考える必要がある。米国は本来、WBCを「必勝の国家プロジェクト」として扱ってきた国ではない。MLBのスプリングトレーニングと時期が重なり、投手の調整は特にデリケートで故障リスクもつきまとう。
メジャーリーガーにとって3月はシーズンに向けてアジャストしなければならない重要な「職業的準備期間」であり、そこに国際大会を挟むことは合理的ではない――。そうした空気が少なくとも長い間、米国内にはあった。
それが今、明らかに変わった。しかも、ただの「打ち上げ花火」ではない。この第6回大会のWBC米国代表のチーム編成は勝ちに行くための布陣であり、さらに言えば「勝ちに行かねばならない理由」が明確に存在することを感じさせるほどの熱量だ。
では、なぜここまで本気モードに突入しているのか。単に自国開催の国際大会だから、という理由では説明がつかない。背景にはもっと“個人的”で、しかも極めて“象徴的”な動機が隠されている。日本を倒す。そして、大谷翔平(ドジャース)を倒す――。この2つこそが、今回の米国代表を突き動かす最大のテーマである。