欲しいのは優勝そのものではなく、「野球の中心は米国」という物語
なぜなら、グローバル配信に必要なのは「多国籍の視聴者が理解できる物語」だからだ。日本の熱狂は濃すぎるがゆえに、外から見るとローカルにも見える。だから米国は、スターの分散と、物語の再編を進めたい。大谷が世界的アイコンであることはむしろ追い風だが、そのアイコンが「日本の勝利」と結びつき過ぎると、主導権が米国側に戻ってこない。
メジャー2球団のフロントマンとして通算12年在籍した経歴を持つMLB関係者も、こう表現する。
「大谷はWBCの商品価値を上げた。だからこそ、次は“アメリカが勝つ物語”が必要になる」
つまり、ネットフリックスの独占配信は単なるメディアの選択ではない。WBCの「主語」を、よりMLB主導へ寄せるための手法になり得るという理論だ。
大谷は米国にとって「誇るべきスター」であると同時に「象徴を奪い得る存在」でもある。この矛盾が、巨大成長メディアでもあるネットフリックスをも巻き込みながら米国を本気にさせている。