米国がWBCの先に見据えるロサンゼルス五輪

 もう一つ、決定的に大きいのが2028年ロサンゼルス五輪の存在である。野球が五輪競技として復活し、メジャーリーガーの参戦も現実味を帯びる。自国内で行われる最大の国際大会で、米国が金メダルを逃すわけにはいかない。

 五輪という国家イベントは、国内政治とも接合する。「国際舞台で勝つこと」は単なるスポーツの成功ではなく、国民統合の装置にもなる。この局面で米国がMLBと協調し、野球国際大会のWBCを「勝てるイベント」として整備し直すのは極めて自然な流れだ。

 つまり次のWBCは米国にとってロス五輪への布石であり、国際野球の主導権をあらかじめ握り直すための重要な前哨戦となる。

 そして第6回WBCのもう一つの特徴が、同大会の独占放映権を手中に収めた米動画配信大手「ネットフリックス」の巨額投資である。日本で地上波放送がなくなることへの反発は強い。

 しかし米国側の狙いは明確だ。WBCを、より直接的に「グローバル配信時代のコンテンツ」として最適化すること。そこでは従来の「日本中心の熱狂」は、必ずしも都合が良いとは限らない。