フランスの政治危機とともに進むEUの地盤沈下
EUの中心はドイツであるような表現が散見されるが、それはあくまで経済でのことだ。政治の中心はあくまでフランスであり、EU本部があるブリュッセルを擁するベルギーは実務の中心である。キングメーカーであるフランスが安定しなければ、EUそのものも不安定化する。少なくとも、EUがその政策を進めにくくなるのは間違いない。
EUの執行部局である欧州委員会を率いるウルズラ・フォンデアライエン委員長は、マクロン大統領の全面的なバックアップを受けて2019年12月に就任した。フォンデアライエン委員長の下、EUは脱炭素と脱ロシアを掲げてさまざまな産業政策を打ち出したが、国際競争力の低下を招き、EUの求心力は低下した。
求心力が低下したEUは、自らが進めてきた規制の強化の見直しを余儀なくされている。例えば10月以降、EUDR(森林破壊デューデリジェンス規則)やCSRD/CSDDD(企業サステナビリティ報告指令/企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)といった規制が適用の後ズレ、ないしは対象を制限する方向で軒並み緩和されている。
フォンデアライエン委員長の求心力は着実に低下しており、これまでのような強い規制はもはや打ち出せない。打ち出したところで、各国から突き上げを食らうだけだろう。庇護者であるマクロン大統領が本格的な“レームダック”(死に体)となり、フランスの政治危機が再燃する中で、EUの地盤沈下もまた進むことになりそうだ。