「モンロー主義」に通じる米国にとっての西半球戦略
カリブ海で米国の軍事プレゼンスを強める中、トランプ政権は12月上旬、国家安全保障戦略(NSS)を発表しました。バイデン前政権による2022年のNSSが中国、ロシアへの対応を主軸としていたのとは異なり、今回は地域政策の最初に「西半球(Western Hemisphere)」対策を載せています。
図:フロントラインプレス作成
地球を赤道で南北に分けて「北半球」「南半球」と呼ぶのに比べて、「西半球」という言葉は日本では馴染みがないかもしれません。英国グリニッジを通る経度0度(子午線)を起点として西へ180度。その0度から西経180度までの範囲が西半球で、事実上、南北アメリカ大陸を指す言葉です。米国では、国際社会における身近な地域を意味する概念として広く使われています。
西半球で米国の友好国を増やし、この地域外からの経済的・軍事的関与を排除する――。それがトランプ政権のNSSが目指す外交政策です。欧州やアジアへの関与を薄める一方、自らに近い地域での影響力は強化していく考え方です。最新のNSSはこの戦略を「モンロー・ドクトリンに通じるトランプの系論(The Trump Corollary to the Monroe Doctrine)」と名付けました。
モンロー・ドクトリン(主義)とは、米国の第5代大統領モンローが1823年の年次教書演説で打ち出したもので、「米国は欧州の国家間の争いに関与しない代わりに、欧州からの西半球への影響力を排除する」という考え方です。この外交方針はその後も引き継がれ、第26代セオドア・ルーズベルト大統領は1904年、欧州各国によるベネズエラへの介入をけん制する「ルーズベルトの系論」を発表しました。トランプ政権のNSSの表題「〜トランプの系論」はこうした歴史を踏まえたものです。