(写真:Billion Photos/Shutterstock.com)
環境にやさしいことを意味する「green」と、欠点を隠して上辺だけを良く見せるという意味の「white washing」。この2つを合わせた「グリーンウォッシュ(green washing)」という語句が注目を集めています。「地球環境にやさしい」などの広告で消費者に働きかけながら、実際には環境配慮の実態を伴っていないことを指す言葉です。欧州ではグリーンウォッシュの規制が本格的に始まり、日本でも環境省が「環境表示」のあり方をめぐる検討会を立ち上げました。グリーンウォッシュの現状と対策はどうなっているのでしょうか。やさしく解説します。
根拠が曖昧な「環境にやさしい」、ナイキもSHEINも…
この12月初旬、英国の広告基準局(Advertising Standards Authority=ASA)が、スポーツ用品ブランドのナイキ(Nike)、スポーツファッションのラコステ(Lacoste)、若者向けアパレルブランドのスーパードライ(Superdry)の3ブランドを運営する企業に対し、宣伝に使った「環境にやさしい」などの表現は根拠不明で消費者を惑わすとして、広告の禁止・再掲不可という厳しい処分を下しました。
英広告基準局の発表によると、対象となった広告はいずれもグーグルの有料広告(Paid Google ads)で、今年6月に表示が確認されたもの。ナイキはテニス用のポロシャツについて「持続可能な素材」を使っているとうたいましたが、同局は「そうした主張には根拠がない」と強調しました。
ラコステとスーパードライも「持続可能な服」「サステナブルなスタイル」といったフレーズで商品をPRしていましたが、やはり同局は根拠が何も示されていないと判断。これら3ブランドの広告を禁止しました。
明確な根拠もないのに「環境にやさしい」「持続可能」を強調し、消費者に「環境に負荷を与えない商品だ」と誤信させたというわけです。これがグリーンウォッシュで、日本語では「環境詐欺広告」とも言います。
英広告基準局の決定はガーディアンやフィナンシャル・タイムズなど英国の有力メディアも大きく報道。グリーンウォッシュに対して、厳しい視線が注がれていることを浮き彫りにしました。
欧州では最近、他にもグリーンウォッシュの実例があります。その1つが中国発のファストファッション・ブランド「SHEIN」です。
同社は自社サイト内の環境関連ページ(#SHEINTHEKNOW、evoluSHEIN など)において、SHEINの製品はリサイクル可能であり、「サステナブル」「環境にやさしい」と強調。さらに企業として「環境への負荷を25%削減する」という目標を掲げていましたが、フランスの競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)はことし7月、これら環境関連の表示には根拠や具体性がないなどとして、約 4000万ユーロ(約68億円)の罰金を支払うよう命じました。
さらに翌8月、イタリアの競争・市場監督機関(AGCM)もSHEINに対し、同様の理由で約100万ユーロ(約1.3億円)の罰金を科しました。同社ウェブサイトでのサステナビリティに関する表現が、消費者を欺くと判断されたわけです。