日本企業にも「グリーンウォッシュ」の指摘
日本ではグリーンウォッシュの名称を用いた法律や規制の制度はありません。グリーンウォッシュという言葉も、広く社会に浸透しているとは言い難い状況です。ただ、環境関連の広告表示が問題となったケースは存在します。
図表:フロントラインプレス作成、出所:電通「第13回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」(2024年3月)から
消費者庁は2022年、BB弾(エアガンで使用されるプラスチック製の小型球状弾)の製造企業5社、プラスチック製の使い捨てカトラリーやストローなどの製造企業2社、これらの商品を扱う卸業者など合計10社に対し、措置命令を発しました。
10社が取り扱うプラスチック製品には「自然環境で分解する」「土に還る」などと表示されていましたが、科学的根拠に乏しく、表示が事実であるとの証拠も示すことができませんでした。このため、景品表示法に違反しているとして、表示の取り止めや不当表示だったことを周知するよう命じられたのです。
グリーンウォッシュとの指摘を受けた企業には、石油・電力事業者の JERAもあります。同社はテレビCMや自社のウェブサイトで「Zero CO2 Emission Thermal Power Generation(ゼロCO2排出火力発電)」「CO2-free fire(CO2が出ない火)」「Zero-emissions thermal power(CO2排出ゼロの火力)」といったフレーズを盛んに使用していました。
これに対し、NPO法人・気候ネットワークと日本環境法律家連盟は「CO2ゼロ火力」という表現は事実と異なる可能性があるなどと指摘。2024年5月、JARO(日本広告審査機構)に審査を求めました。JAROは「広告審査の範囲外」として申し立てを退けましたが、この動きを機に「グリーンウォッシュ」という言葉が日本社会でも浸透し始めたとされています。
環境関連の広告問題では、環境省が2013年に「環境表示ガイドライン」を策定し、リサイクル・マークの浸透などを促してきました。ただし、グリーンウォッシュに対する規制を主に担ってきたのは、景品表示法を所管する消費者庁でした。こうしたことから、環境省はガイドラインの改訂を視野に入れた「環境標示のあり方に関する検討会」をこの9月に立ち上げ、欧米のグリーンウォッシュ規制も参考にしながら、大袈裟で根拠のない環境広告への新たな対応策の検討に着手しています。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。