EU、グリーンウォッシュの規制強化

 グリーンウォッシュに関する摘発が欧州で続く背景には、EU(欧州連合)の厳しい姿勢があります。

 EU理事会は2024年2月、グリーン・クレーム指令(The green claims directive)を採択しました。環境配慮を意味する「グリーン」を企業が詐欺的に強調することを禁じ、消費者を保護しようというもので、グリーンウォッシュ禁止法と呼ばれています。このEU指令が採択されたことで、EU加盟国はグリーンウォッシュを禁じる国内法を整備しなければなりません。

 こうした規制強化の背景には、地球温暖化防止が世界規模の課題となってきたことに伴い、環境保護に関する企業の過大・虚偽広告も無視できない規模になってきたという実態があります。

 オランダではKLM航空が展開していた「Fly Responsibly(責任ある飛行)」「より持続可能な未来を共に作ろう」というキャンペーンが、2024年に裁判所でグリーンウォッシュに当たると判断され、原告の環境団体が勝訴しました。ドイツでは、アップルの広告もグリーンウォッシュであると判断されています。同社のアップル・ウォッチは「CO2ニュートラル(カーボンニュートラル)」を売り物にしていましたが、フランクフルトの裁判所は今年8月、根拠があいまいであり、消費者を欺くものだとしてドイツ国内で同様の広告表現を継続することを禁じる判決を言い渡したのです。

 環境への配慮をうたう広告が適切かどうか。それを裁判で争うケースとしては米国のデルタ航空をめぐるグリーンウォッシュ訴訟が知られています。

 デルタ航空は2020年3月から「the world’s first carbon-neutral airline(世界初のカーボンニュートラル航空会社)」というキャンペーンに乗り出しました。それに併せて同社は「今後10億ドル投じてカーボンニュートラルを達成する」と宣言。同様の主張・フレーズを広告やマーケティング資料、プレスリリースなどで繰り返し使用していました。

 これに対し、米国カリフォルニア州の市民が「虚偽広告、誇大広告の疑いがある。騙されて高い航空券を買った市民の経済的損失をデルタ航空は補償しなければならない」として2023年に集団訴訟を起こしたのです。

 原告が強調しているのは、デルタ航空が示しているカーボン・オフセットへの疑義です。カーボン・オフセットとは、自らが排出した二酸化炭素と同量を植林や再生可能エネルギーの開発などで穴埋めしてプラス・マイナスをゼロにする考え方ですが、集団訴訟の原告はデルタ航空のカーボン・オフセット策には計算方法や削減方法の実現性に大きな問題があると主張しています。

 訴訟は現在も審理中ですが、グリーン広告の根拠にカーボン・オフセットを用いることが適法かどうかをめぐる初の司法判断となりそうです。カーボン・オフセット施策そのものは現在、企業の多くが採用しています。その広告を表示する際の法的責任が問われており、環境問題に向き合う各国の企業は訴訟の行方に大きな関心を払っています。