あらゆるジャンルで80点~90点の初稿を作成する「GPT-5.1(Pro)」
【GPT-5.1(Pro):万能エース・ライター】
GPT-5.1の中でも最高の推論能力、研究グレードの知性を持ち、論理的整合性はトップクラスだ。また指示への追従性が高く、どんなジャンルでも80点〜90点の初稿を作成してくれる。その能力を最大限に生かすのであれば、多段階の推論を伴う学術文書や、専門的知識の解説原稿のドラフト作成に最適と言えるだろう。
先ほどGPT-5.1 Thinkingの例で使ったのと同じ論文を与え、それに基づいて「『2023年のStack Exchange(SE)のモデレーター・ストライキ』の原因を、日本語で1000字で説明する記事を書いて下さい。また、その考察を踏まえた、プラットフォーム運営者への提言も最後に述べて下さい。その際、結論となる主張が理解しやすくなるよう、ロジックを明確にすることを心がけて下さい」という指示をProに与えてみた。少し長くなるが、結果を掲載しておきたい。
Wuらの論文「AI Didn’t Start the Fire」は、2023年のStack Exchange(SE)モデレーター・ストライキは、生成AIへの単純な反発ではなく、長年のガバナンス不信にAI危機が重なって発生したと結論づける。
第一に、SE社は創設当初「コミュニティ主導」を掲げ、ユーザーを重要なステークホルダーとして扱っていたが、次第に方針決定を一方的に進めるようになった。
2019年の「Monica事件」に象徴されるように、主要モデレーターの突然の解任と不十分な説明は、「自分たちはパートナーではない」という感覚を広げ、その後も目的が不明瞭な告知や、現場の声が経営側に届かない状態が続いた。
透明性を欠くガバナンスとコミュニケーションの積み重ねが、コミュニティの信頼と忠誠をじわじわと蝕んでいったのである。
第二に、生成AIの普及は、この脆くなった関係に直接火をつけた。
低品質なAI生成回答が大量に投稿され、ボランティアの負担が急増したにもかかわらず、SE社は「AI回答を理由にした制裁を控える」方針を突然示し、品質を守ろうとするモデレーターの判断を事実上否定した。
同時に、長年続いてきたデータダンプの停止とAPIの収益化が打ち出され、「自由で再利用可能な知識」という約束がAI企業向けの収益化に置き換えられつつあるのではないかとの疑念が高まった。自分たちの投稿がAI学習に使われながら、CC BY-SAライセンスに見合うクレジットが十分ではないのではないかという帰属不安もこれに拍車をかけた。
論文はこの経緯をヒルシュマンの「退出・発言・忠誠」フレーム(組織や国家が衰退した際に人々がどう反応するかを示す理論)で説明する。
コミュニティはMetaサイトなどで繰り返し意見を表明してきたが、会社は実質的に応じず、「発言(改善を求めて声を上げる行動)」は成果に結びつかないまま「忠誠」が低下した。
一方、積み上げた知識やネットワーク効果を失わずに完全に退出することは容易ではない。声は届かず、しかし簡単には去れないという行き詰まりの中で、「ボランティア労働の集団的停止=ストライキ」が、会社に交渉を迫る最後の手段として選ばれた、という構図である。
この分析から、プラットフォーム運営者への示唆は明確だ。
第一に、単なる「意見募集」ではなく、コミュニティに拘束力ある発言権(effective voice)を与える制度──全ネットワークに影響するポリシー変更へのモデレーター代表の同意や一定期間のレビュー義務など──を設けること。
第二に、ボランティアの知識生産とモデレーションにビジネスが依存していることを明示し、短期収益を優先したデータの囲い込みや一方的なAI方針転換を避けるガバナンス原則を掲げること。
第三に、データポータビリティとオープンなアーカイブを維持しつつ、高負荷な企業向けAPIなど付加価値部分のみを有償化するなど、自由な知識共有と収益化の両立を図ることである。
AI時代のプラットフォームは、「コミュニティの信頼を維持するコスト」を事業の前提に組み込まない限り、SEと同様のストライキや離反を繰り返し招く危険がある。
論文の解説用レポートとしては、まったく問題のないファースト・ドラフトと言えるだろう。ライターにとっては、逆に自分の仕事を脅かされるのでは?という危機感すら覚えるGPT-5.1 Proだ。