評価益は30兆円超、株価変動で兆円単位で動く
それでは、出口戦略が検討され始めている日銀保有ETFの現状はどのようになっているのだろうか。
2010年以降、日本銀行はETFを介して日本株式市場に約37兆円の資金を投入し、株価上昇によりその規模は約70兆円(時価ベース・2024年9月末現在)にまで膨らんでいる。
図は、日本銀行が保有するETFの残高と、わが国のETFにおける日銀シェアの推移を示したものである。異次元緩和が進み日銀による買付額が増えただけでなく、株式市場も堅調に推移したため、評価額が膨らんだのが明らかになっている。

評価益は33兆円まで巨額化しているが、2024年3月には37兆円を超えていたため、株価の変動に応じて評価益が数兆円単位で変化していることになる。
それに加えて、日本銀行の評価損益が株価指数の変動に左右されるだけでなく、日本銀行のETF処分策が株価指数を左右する点は見逃してはならない。巨額化した日銀保有ETFは、東証株価指数(TOPIX)の時価総額における7%超を占めるからだ。
さらにわが国に上場するETFは86兆円(同)に過ぎないため、ETF全体に占める日本銀行保有比率は80%を超えている。日本銀行の処分スピードが速まれば、ETF市場そのものが縮小せざるを得ないため、「池の中の鯨」が騒ぐどころの話ではなくなる。
ところで、日本銀行は、保有するETFの出口戦略についてどのように考えているのだろうか?