2200から1200に、TOPIX構成銘柄削減の影響

 東京証券取引所は、2022年4月に約2200銘柄で構成されていた東証株価指数(TOPIX)の見直しを順次進めており、2025年1月に第一段階の見直しが完了し、約1700銘柄まで対象銘柄数が減少しているのである。そのため、主にTOPIXに連動するETFを保有する日本銀行が保有する株式銘柄数も、これに応じて削減されている。

 このように株価指数は、その指数を算出しているプロバイダーの基準により見直しが実施されていく。特に日本銀行が保有するETFが連動するTOPIXは、大幅な見直しが実施されている過程にある点は再認識しておきたい。

 指数の連動性は確保されるもかもしれないが、2028年7月には約1200銘柄まで削減され、通算6年間超で約1000銘柄が対象から外れることになるため、資産買入の範囲が受動的に狭くなるわけである。日銀の行動が直接、投資家に影響を及ぼすわけではないが、改めて日銀が選んでいる株価指数の特性を再検討するきっかけにはなるだろう。

 国債の買い入れとは異なり、日本銀行が独自に株式の対象銘柄を選別することは避けるべきだが、日本銀行は、今後、数百年かけてETFが連動する株価指数の適合性についての検討に力を割く必要がある。長き道であるがゆえに、資産買入の対象として残り続けるETFが連動する株価指数の適合性を判断し、その選択を実施していかねばならないだろう。もちろん、この指数の選択自体が、株式市場に歪みをもたらす可能性もあり、その点も織り込んだ判断が日本銀行には必要になってくるのは言うまでもない。

 考えれば考えるほど、「日銀ETF問題」は厄介な問題なのである。

平山 賢一(ひらやま・けんいち) 麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト
1966年生まれ。資産運用会社を経て、1997年東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)に入社。2001年東京海上アセットマネジメントに転籍、チーフファンドマネジャー、執行役員運用本部長(最高投資責任者)を歴任。2025年からは経済史研究を軸足に現代の金融市場を分析。メディア出演のほか、レポート・著書などを多数執筆。主著に『戦前・戦時期の金融市場 1940年代化する国債・株式マーケット』(日本経済新聞出版)、『金利の歴史』(中央経済社)、『物価の歴史』(中央経済社)などがある。

著者の近著『金利の歴史』(中央経済社)