近隣国を血祭りにあげる政策は岩盤支持層へのパフォーマンスか
メキシコやカナダ、パナマ、グリーンランドなど、アメリカの近隣国を次々と血祭りにあげる政策について、一般の米国民、特にトランプ氏の岩盤支持層にとっては、南北米大陸以外の遠方の外国はピンとこないかもしれない。
広大な国土で、ほぼ全てが自給自足できるアメリカの一般国民は、同じ先進国の日欧に比べて、概して海外への関心が薄いとも言われる。
特にインド太平洋に関しては、地理的にも近い米西海岸は別として、米北東部のラストベルト(五大湖周辺の重工業地帯)や、中西部の住民には、ほとんどなじみがない。米海空軍、海兵隊の元軍人を除き、「日本はどこ?」の問いに、地図上でフィリピンを指さす人間も少なくないと聞く。
実際、ヘグセス米国防長官は、長官就任直前の2025年1月、公の場でASEAN(東南アジア諸国連合)について聞かれ、「何カ国か知らないが、日本、韓国、豪州は同盟国だ」と珍回答した。
質問した民主党議員はあきれ、「少しは勉強すべきでは……」とたしなめる一幕もあった。ペンタゴン(米国防総省)のトップですら、国際情勢・地理の知識はこの程度である。

トランプ氏は岩盤支持層に対し、「アメリカを搾取してきた外国には、同盟国・友好国など無関係で、強く出るぞ」とアピールしたいのだろう。近隣国を標的にする理由として、貿易赤字や移民・難民の流入、違法薬物など問題山積の事情もあるが、同時に「国民がイメージしやすい」という点も重視したと考えられる。
これらを考えると、カナダやメキシコなど近隣国への難癖は、モンロー主義というよりも、「岩盤支持層へのパフォーマンス」という案外単純なものなのかもしれない。