困った時期に困った製品が・・・

 いったい何が起きたのか?

 韓国の通商政策に深く関与したことがある大学教授に「韓国の対米黒字が短期間にずいぶん増えたのはどうしてか?」と聞いてみた。

 すぐに答えが返ってきた。

「自動車だ」

 韓国の統計によると、韓国から米国向けの自動車輸出台数は2020年には82万台だった。これが2023年130万台、2024年143万台とここ数年間で急増した。

 2024年の全世界向け自動車輸出額は707億8900万ドルだったが、このうち49.1%にあたる347億4400万ドルが米国向けだった。

 米統計を引用した朝鮮日報によると、2024年の国別の対米自動車輸出台数は1位メキシコに次いで韓国は日本を逆転して2位に浮上した。

 すごい勢いだったのだ。

 ちょうどの頃、現代自動車と起亜の快進撃が続いていた。

 中国市場で苦戦した両社は、米市場に付加価値が高いRV車などを戦略的に輸出し、業績を大きく伸ばしていた。

 さらに韓国GMも対米輸出を大幅に増やしたという。

 先の元政府高官は「韓米間の貿易統計をちょっと見ただけで、ここ数年、韓国勢が自動車の対米輸出ドライブをかけていたことは明らかだ」と説明する。

 困った時期に困った品目と言ったのはこのためだ。韓国紙デスクは、「対米自動車」がいかに重要かをこう説明する。

「20年近く韓国経済を牽引してきたのが半導体産業だが、サムスン電子が競争力を失いつつあるのではないかという懸念が強まっている」

「そんな中でここ数年、現代自動車グループ2社の快進撃が救いとなってきた。最も儲けていた対米輸出にブレーキがかかると経済全体に大きな影響が出る」