企業CEOが大挙ワシントン入り
それなら、とばかり動き始めたのが韓国の産業界だ。
大韓商工会議所は2月19日に米国に「20大グループのCEO(最高経営責任者)で構成する訪問団を急遽派遣する」という。
大韓商工会議所会長を務める崔泰源(チェ・テウォン=1960年生)SKグループ会長のほか、サムスン電子、現代自動車などのCEO、社長がワシントン入りし、政府や議員などネットワークを総動員して「韓国が関税付加などでの例外措置」となるよう地ならしをして政府を支援する。
さらに韓国経済人協会の会長なども直後に訪米する計画だ。
輸出で稼いできた企業にとっては、通商問題は死活問題なのだ。
だが、企業はあくまでも企業だ。サムスンやSKが米政府と交渉するわけではない。
通商政策に長年携わった元政府高官は最近、セミナーやメディアのインタビューで超多忙だ。
いずれもトランプ政権の通商政策の狙いと対応策を話してほしいということだ。この高官がこう話す。
「トランプ政権はガツンと殴って交渉の席に着かせる。その上でどんな譲歩を迫るのか全く見えない。LNG(液化天然ガス)を買うという程度で済むとも思えない」
「企業の経営者と毎日のように話すが、こういう時こそ政府に率先して動いてほしいのに・・・という話に必ずなる」
「代行の代行」体制がじわじわと効いているというのだ。
韓国紙のベテラン経済記者は最近、長老格の企業経営者にこう叱られたという。
「今さら大統領不在を嘆いても仕方がない。政治がうまくいかなくても経済は何とかうまく回す。韓国はこれまでずっとこうやってきたし、今回もなんとか乗り切るしかない」
韓国では尹錫悦大統領に対する弾劾審判が急ピッチで進んでいる。3月中にも結論が出るとの見方が有力だ。
ところが、トランプ政権の動きはもっと早い。
3月12日に鉄・アルミニウムに対する25%の関税を付加するのに続き、4月2日頃から輸入自動車に関税を課す方針を明らかにした。
ロケットスタートを切ったトランプ政権の様々な新政策がはたして予定通りにうまく進むのか。
まったく不透明だが、韓国にとっては「困った時期」の米国発の大攻勢である。