米国の相対的衰退は必然だった
喜べないと同時に少し安心できる話だが、他国の追随を許さない地位に米国がしがみつくためにできたことはあまりないというのが本当のところだ。
中国が1970年代終盤に改革を始め、旧ソ連圏がその10年後に続き、一部閉じられていたインドもその直後に開放に転じた時点で、米国の国内総生産(GDP)が世界全体のそれに占める割合――ひいては米国の影響力――が縮小していく公算は大きかった。
(GDPシェアは第2次大戦直後の史上最高のピークからすでに低下していた)
西側世界の優位性は、世界最大級の人口を擁する一部の国々が同時に経済面でとんでもない選択をしていたおかげでもあった。
ひとたび過ちが正されれば、新しい勢力バランスが生まれるのは必然だった。
もし米国一極支配の亡骸を検死官が調べることになったら、これは自殺でも事故死でもなく自然死だと判断することだろう。
米国主導の世界の方が考えられる別の世界より好ましいと考える人でさえ、人類の4~5%が住むだけの国が世界全体を牛耳るというのは本質的に考えにくいことだと理解しなければならない。
実際、米国は1世紀ほど前に、それと同じ数の力のおかげで世界最強の大国・英国を追い抜いた。
その頃の英国のリベラル派は、関税の壁に隠れて工業化を進めた国にトップの座を奪われることに不満を抱いていた。
当時を振り返って、保護主義が大きな問題だったと考える人が果たしているだろうか。
米国がオウンゴールでもしない限り、最後には国の規模がものを言ったはずだ。