(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年1月28日付)
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米国大統領に就任したドナルド・トランプはまだ数々の関税の脅しを実行に移していないが、実行する公算が大きい。
このため貿易に対するトランプの攻撃的なスタンスが世界的な混乱の種をまき、経済成長を落ち込ませ、市場を大きく揺るがすとの不安が残る。
標的になった国が報復した場合は特にそうだ。
だが、トランプが最終的にどれほど幅広く脅しを実行に移したとしても、報復は唯一の対抗措置ではなく、最も可能性が高い対応ですらない。
米国はもう8年間にわたって関税を武器として振り回してきた。
1期目のトランプ政権下で課された関税はジョー・バイデンによってほぼ継続され、中国の場合は拡大された。
報復した国もあれば、譲歩を申し出た国もあり、国際的な貿易仲裁機関で異議を申し立てた国もあった。
だが、大半の国はただ静かに前進し、米国以外の国との貿易を模索するようになった。
金融・経済超大国でも、貿易大国には陰り
1期目のトランプ政権の初年度に当たる2017年以来、貿易は世界の国内総生産(GDP)の60%弱の水準でおおむね安定している。
だが、貿易フローに占める米国のシェアの低下が、その他地域、特にアジア、欧州、中東諸国のシェア拡大によって相殺されてきた。
「トランプ2.0」は同じものをもたらす公算が大きい。米国抜きの貿易がそれだ。
過去8年間で、先進国・新興国の5カ国中4カ国以上で各国のGDPに占める貿易の割合が上昇した。
日本からイタリア、スウェーデン、ベトナム、ギリシャ、トルコに至るまで、十数カ国の主要経済国で10ポイント以上のシェア拡大が記録されている。
大きな例外が米国であり、貿易の比率がGDP比25%程度に低下した。
米国は大半の主要国より速いペースで成長している。だが、貿易による押し上げ効果はない。
米国は金融・経済超大国としての支配的な地位を固めているのかもしれないが、貿易大国としてはそれほどでもない。
世界の株式指数に占める米国のシェアは爆発的に拡大し、ほぼ70%に達している。世界のGDPに占めるシェアも若干上昇し、25%強に達した。
ところが、世界の貿易に占めるシェアは15%にも満たず、過去8年間で大幅に低下している。