広範な関税の本当のリスクは米国への打撃
その結果が以下の通りだ。
過去8年間で国際貿易の中心が米国から中東、欧州、アジアへシフトするなか、大幅なシェア拡大を記録した国にはアラブ首長国連邦(UAE)、ポーランド、そして何より中国が含まれた。
成長スピードが最も速い10の貿易回廊のうち5つは片方の発着地が中国で、米国が発着地となる回廊は2つだけだ。
トランプは、関税は尊敬を集め、米国の国力を取り戻すのに役立つと話している。
だが、検討する価値があるリスクがもう一つある。
新大統領が掲げるタイプのポピュリズム(大衆迎合主義)は税金と規制による厳しい政府の介入から米国を解放することを誓っているが、関税もまた別の形態の介入であり、同じように意図せぬ結果を招く可能性があるのだ。
これまで、「米国第一」の関税レジームは主な標的である中国にそれほど打撃を与えず、むしろ同盟国が米国以外の貿易相手国を探すように仕向けることになった。
このため、さらに広範な関税をかけるリスクは、貿易戦争を引き起こすよりは、貿易大国としての米国の存在意義を損ない、いずれその経済力を奪うことなのかもしれない。
(文中敬称略)
By Ruchir Sharma(ルチル・シャルマ氏は米ロックフェラー・インターナショナル会長)