(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年1月16日付)

中国を訪問して習近平氏の最側近の一人と言われる何立峰副首相と会談した英国のレイチェル・リーブス財務大臣(1月11日、写真:新華社/アフロ)

 レイチェル・リーブス財務相が1月10~13日の日程で英国を売り込みに中国を訪問した時、保守党のトム・タジェンダット議員は台湾の方が優れた経済的パートナーになるとの見解を明らかにした。

 英タイムズ紙への寄稿はわずか2500語に限られていたため、次に記す事実は言及に値しないと判断した。

 台湾の国内総生産(GDP)は年8000億ドルで、中国のそれは19兆ドルに上るという事実だ。

 タジェンダット氏――好人物ではあるが、上流階級の出自とアクセントがあれば空っぽの船も英国政界の凪いだ海を進めることを身をもって証明している人物――だけではない。

 保守党には、英国が中国と距離を置くことを望んでいる政治家が大勢いる。

 中国と距離を置くことには安全保障上の確かな理由がある。だが、なぜそこで「経済」という隠れ蓑を使うのだろうか。

 自分たちにとって経済成長はそれほど重要ではないと、なぜ率直に認めないのか。

どっちつかずの曖昧さ

 英国の問題は、ほぼ全員が経済成長を最優先事項として挙げる一方で、ほぼ全員が本心ではそう思っていないことだ。

 経済成長よりも優先順位の高い事柄が、地政学であれ環境問題であれ、文化の問題であれ平等主義であれ、必ず存在する。

 その結果、英国には考え得る限りで最悪の事態がもたらされている。

 経済的な成功を目指す真剣な取り組みがないが、波乱の少ない停滞の人生に落ち着こうとする暗黙の国民的合意も存在しないのだ。

 どちらかを選ぶのなら、それはそれでメリットとデメリットを踏まえた大人の選択になる。

 英国をぬるま湯的な状況に陥らせているのは、経済成長は抽象論では好ましいとされるが具体論として形にならない曖昧さだ。

 英国には「成長戦略」が欠けていると論じている新聞の社説を探せば、何百何千と見つかるだろう。

 もしそれが「政策」を意味するのであれば、英国はその種のものに事欠かない。切らしてしまった時期などほとんどないくらいだ。

 本当に欠けているのは「成長選好」と呼べるものかもしれない。

 経済成長とほかの目標が対立したら経済成長が常に優先されるという、確固たる見方のことだ。