労組も環境保護論者も成長を望むが・・・

 世の中を変えるとされるAIの力が、派手な宣伝の半分でも本当にあるのなら、公的セクターでも失業者が出ることになる。

 例えば、医療機関の診断の場面では人手を減らせるようになるだろう。労働組合は経済成長を望んでいる。だが、それほど強くは望んでいない。

 また、AIを稼働させるには途方もない量のエネルギーが必要だ。

 現在のレベルの電力使用量でさえ、英国内の供給電力の脱炭素化を2030年までに実現するという現政権の目標は達成不可能だ。

 データセンターによる新たな電力需要を満たそうとすれば、こうした目標はあきらめなければならないかもしれない。

 分別のある環境保護論者は経済成長を望んでいる。だが、それほど強くは望んでいない。

 もし英国がAIの分野で最も優秀な人材を呼び込もうというのであれば、高所得者の所得税率やキャピタルゲイン税率を引き下げる必要があるかもしれない。

 ところが、スターマー政権がそのような考えに手を伸ばすや否や、レゾリューション財団のようなタイプのシンクタンクが経済格差に及ぼす影響をグラフにまとめ、スターマー氏を屈服させる。

 経済成長率が年1.5%の社会民主主義国と、成長率が年3%で経済格差の大きな国のどちらがいいかと問われたら、前者を選ぶ人も出てくる。

 彼らは経済成長を望んでいる。だが、それほど強くは望んでいない。