米国の強さを支える「成長選好」
同じことを別の角度から論じてみよう。過去20年間の米国の成長戦略は何だったろうか。どの政権がそれを公表したのか。
誰かそのプレスリリースのリンクをメールで送ってもらえないか――。
筆者がこうした質問をいわゆる「戦略屋」に向けても、国防高等研究計画局(DARPA)の役割について書かれたあやふやなハッタリが返ってくるのが関の山だ。
結局、世界で経済的に最も成功しているあの国に計画はなかった。
米国にあったのは、シェールオイルやそのほかの優位性を除けば、極めて強い成長選好だった。
経済成長とほかの状況との摩擦――例えば減税と所得の平等、企業の拡大と市場独占に対する懸念、フラッキングと現地住民の感情など――が生じた時、米国には経済成長を優先する傾向があった。
少なくとも西欧の平均に比べればそうだった。
法定有給休暇のようなものさえ期待しない文化の国だから、英国にはできない(あるいは、やろうとしない)ダイナミックな選択ができる。
キア・スターマー首相は先日、人工知能(AI)を使って英国を豊かにする計画を打ち出した。
首相が本気でないことが明らかになったのは、AIを「あらゆる人のために役立てる」つもりだという発言が出た瞬間だ。
何らかの価値がある政府の改革が万人のためになるということは、ほとんどない。
この発言は、AIがどこかの利益集団をひとたび脅かせば、すぐに首相が折れると認めたも同然だった。