(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年1月15日付)

まるで忠誠度を競うかのようにホワイトハウスを訪れた企業家たち(左からトランプ大統領、ソフトバンクの孫正義社長、オラクルのラリー・エリソンCTO、オープンAIのサム・アルトマンCEO、1月21日、写真:AP/アフロ)

 米国の民主主義はドナルド・トランプの2度目の政権を生き延びられるか――。これはただの理論上の問いではない。

 トランプが自由民主主義を非自由主義的な民主主義へ変えるために既知のルールブックに従っていることは明らかだ。

 後者は独裁制に張られるレッテルであり、それは意思決定がほぼ誰に対しても説明責任を負わないたった一人の人物の意思に委ねられる体制だ。

 米スタンフォード大学の政治学者ラリー・ダイアモンドは著書『The Spirit of Democracy(民主主義の精神)』で、自由民主主義は自由で公正な選挙、市民権や人権の平等な保障、そして全市民を平等に縛る法の支配によって構成されていると論じた。

 つまり、これらが「ゲームのルール」だということだ。

 だが、このルールの有効性は国家を一時的に支配する人物に対する制約にかかっている。

 こうした制約のなかで最も重要なのは司法制度、政党、官僚機構、そしてメディアだ。

 問題は、まずトランプの大統領在任中、そして次に長期的にこれらの制約が維持されるかどうかだ。

政権の顔ぶれに見える意図

 米ニューリパブリック誌での最近の対談で、『How Democracies Die(民主主義の死に方)』の共著者であるハーバード大学のスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラットは、権威主義的な乗っ取りを前にして、「集団的な放棄」あるいは「制度的自殺」の古典的なプロセスがすでにかなり進行していると指摘した。

 トランプは共和党を乗っ取った。

 トランプが党の支持基盤を支配していることから、共和党はトランプが2020年の大統領選挙に勝利したという「大きな嘘」にお墨付きを与えた。

 米最高裁判所は、大統領は「公式な行為」については刑事訴追を免れると判断した。

 これは大統領を法の上に置き、それゆえ事実上、市民というよりも王のような立場に置くと英国の法学者ジョナサン・サンプションが主張するドクトリンだ。

 そして何より、我々はすでに米メタ創業者のマーク・ザッカーバーグのような有力者が新たな支配者の前にひざまずく姿を目の当たりにしている。

 彼らは何を恐れているのか。

 大統領が国家の機構を兵器化し、自分たちに対して使うことだ。それがまさに、トランプとその取り巻きがやろうとしていることだ。

 政権の要職に指名された顔ぶれが強力にそれを示唆している。

 保守系シンクタンクのヘリテージ財団の「プロジェクト2025」で描かれた、官僚をトランプに忠誠を誓う人間に置き換える計画にもその意図がうかがえる。

 こうした忠誠心は独裁政治の強力な武器になる。

 その結果、官僚機構は本来施行すべき法に従うのではなく、大統領に従順になるからだ。