世界で貿易協定の締結ラッシュ
トランプの影響に対する多くの警告は、新たな関税が主要顧客として米国に依存している輸出国にどのような打撃を与えるかに焦点を当てている。
だが、新型コロナウイルスのパンデミック前の1期目のトランプ政権の最中には、大統領の関税攻勢にもかかわらず、先進国は安定した成長を遂げ、発展途上国では(ハイテク製品とコモディティーを筆頭とする)財と(輸送とデジタルサービスを筆頭とする)サービス双方で輸出が力強く加速した。
2008年以降、世界的な貿易交渉が破綻した。
同年の金融危機が緊張を引き起こし、大規模な多国間貿易協定を締結することが難しくなったからだ。
だが、多くの国は小規模な協定を追求し続けた。
トランプが最初に大統領に就任し、すぐに「タリフ(関税)マン」として振る舞い始めると新たな弾みがつき、二国間協定と地域協定の数が着実に増加していった。
米国は例外的な存在になり、諸外国が貿易協定をまとめる術を極めていくのを傍観した。
2017年以来、米国は欧州連合(EU)やアジアとのパートナーシップ協定の交渉を放棄し、新たな貿易協定を一つも結んでいない。
一方、EUは8つの協定の交渉に臨み、中国はアジア15カ国が参加する画期的なパートナーシップ協定を含め、9つの協定を締結している。
昨年の暮れには、2期目のトランプ政権発足が近づくにつれて貿易交渉が活発化した。
EUは「南米南部共同市場(メルコスル)」加盟国との25年越しの難しい貿易協定の最終合意を急ぎ、その後、メキシコとの貿易協定を締結した。
メキシコは今、部分的にはトランプが次に打つ手に対する保険として、近隣の中南米諸国との貿易関係の拡大を急いでいる。