(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年2月4日付)

「関税についての我々の戦略は、最初に撃ち、後で質問することだ」
これはドナルド・トランプの主な経済政策立案者の一人が昨年暮れに筆者に話してくれたことだ。
この種のマッチョな威勢は現在、ワシントンで流行している。
だが、よく考えずに衝動的に行動する米国大統領の戦術は極めて危険だ。それもトランプ関税の標的にされた国だけでなく、米国自体にとってもだ。
西側同盟に楔、ロシアと中国には心願成就
米国にとっての潜在的な経済リスク――インフレ高進と産業の混乱――はよく知られている。
米国にとっての戦略的な結果はすぐにはそれほど明白ではないが、同じくらい深刻で、より長引くものになる可能性がある。
関税は西側の同盟の結束を破壊する恐れがある。
トランプは米国から脅かされていると感じるようになった多くの国によって形成される新たなグループ分けの種をまいている。
協力関係は当初は非公式なものになるが、関税戦争が長引くほど強固になっていく。
西側の結束が崩壊すれば、ロシアと中国にとっては、まさに夢がかなったことになる。
トランプ自身は気にしないかもしれない。何しろ、これまでもよくウラジミール・プーチンと習近平への尊敬の念を表明している。
だが、トランプがそれぞれ国務長官と国家安全保障担当の大統領補佐官に任命したマルコ・ルビオとマイク・ウォルツはともに、中国の力を封じ込めることは米国が直面している主たる戦略的課題だと考えていると主張している。
もしそうだとすれば、トランプが中国とカナダ、メキシコに関税をかけるのは非常に愚かなことだ(編集部注:メキシコとカナダは交渉で1カ月の発動延期を取りつけた)。
関税をかけることで、これら3カ国、さらには次に関税の標的になると告げられている欧州連合(EU)の間で利害の一致を生み出すことになるからだ。