米企業に比べて、中国企業は開発のための資金力が不足しているが、DeepSeekは、AIの学習過程を短縮させ、推論能力を持たせて、自分で考えて答えを出す方法に変えて、開発コストを削減した。

 また、アメリカによる規制で不足する半導体については、半導体のメモリ使用量を減らす設計にした。

 毎年、私は訪中し、清華大学、復旦大学などで講義しているが、日本以上の受験地獄を生き抜いた優秀な学生が揃っており、AI開発でも人材が潤沢である。

 中国共産党の指導部と話をしても、不振の不動産業に代わる産業として、AIなどの先端技術を念頭に置いているという。それだけに、AI開発には、習近平政権の強力な支援がある。政権批判させしなければ、自由な研究開発が可能である。

早くもDeepSeekに批判も

 DeepSeekのR1については、様々な批判も巻き起こっている。

 28日、ブルームバーグによると、オープンAIとマイクロソフトが、DeepSeekがオープンAIの技術を使って大量のデータを不正取得した疑いがあるとして調査していると伝えた。公開されているオープンソースだけでなく、オープンAIの非公開の大規模言語モデルを使っているといいう疑惑が出ている。

 オープンAIは、「アメリカの技術を奪おうとする敵対者や競合他社から最も有能なAIモデルを保護するために、政府と緊密に連携することが極めて重要だと考えている」とコメントしている。

 ウエブサイトの信頼性を評価する「ニュースガイド」は、29日、DeepSeekが「正しい答えを出せない確率」は83%に上るというレポートを公表した。83%の内訳は、虚偽の主張が30%、無回答が53%である。他社との比較では最下位だという。とくに、中国の政治に関する質問に対しては無回答が多いが、それは中国の政治体制を考えれば当然である。そいれ以外の分野では全く問題がない。

 DeepSeekの生成AIサービスが大規模なサイバー攻撃を受け、それは全てアメリカからのものだと、29日、中国系メディアが報じた。

 AIをめぐる米中対立が始まりそうである。バイデン政権は、AI半導体の輸出規制を行い、中国の技術開発を遅らせようとした。トランプは、この政策を破棄する大統領令を発令し、先述したように、AI分野への巨額の投資を明らかにした。DeepSeekの出現については、「安価な方法があるのはよいことだ。私たちへの警鐘だ」と述べている。