二輪は実に「ホンダらしい」
こうしたインドなど新興国で売れているモデルは、通勤・通学で使うスクーター『アクティバ』や、若者向けスクーター『ディオ』など、日常生活での移動向けが主体だ。
バイク需要が多い国としては、一般的にベトナムやタイなどを思い浮かべる人もいるかもしれない。だが、新興国の中でもこうした経済がある程度まで発展している東南アジア諸国では、バイク需要はすでに安定期に入っている。そこでは、インドのような急激な需要の伸びはあまり期待できない。

他方、経済が成熟している欧州では、趣味で乗る大型のファンモデルで順調に利益を稼いでいる。『CBR』や『アフリカツイン』、『レブル』などの各シリーズでラインアップを拡大しているほか、古くからのユーザーになじみのある『ホーネット』や『トランザルフ』などのブランドを復活させている。
『デュアルクラッチトランスミッション(DCT)』や『Eクラッチ』など、ホンダらしい新技術を搭載することで走行性能を上げることでバイクを操る楽しみを向上させ、ユーザーの購買意欲をかきたてている。
生産については、部品の共通化を拡大するなどして収益性を高めている。大型ファンモデルでも『ホンダらしいものづくり』の流れが良い方向に動いている印象だ。

一方で、四輪事業はどうか。
国際自動車工業連合会(OICA)によると、2023年の乗用車・商用車の世界販売台数は前年比11.9%増の9272万台に及ぶ。
日米欧など先進国の需要は安定期か、もしくは人口減少に伴い下降期に入るだろう。他方、2000年代以降はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)と呼ばれた新興諸国の需要が大きく伸びてきた。
ホンダは一時、四輪600万台構想を打ち出したものの、生産効率や市場変化の兼ね合いから現在の400万台レベルを維持している状況だ。
今後は、インド、グローバルサウス、さらにアフリカなど二輪需要が伸びる地域で、四輪需要も伸びていくことが考えられる。だが、二輪のような急激な台数の増加は見込めないだろう。
背景には、カーシェアリングや自動運転タクシーなど「所有から共有」という概念の拡大や、新車販売後のバリューチェーンにおける新たなサービスの発達などによって、大量生産・大量消費に支えられた四輪の需要が世界的に徐々に頭打ちになっていくことが考えられるからだ。実際、そうした事業環境の転換に関して自動車メーカー各社のトップが言及する場面も増えてきた。
販売台数を追うと同時に、『もうかる事業体系』への転換が四輪事業で求められている。量から質への事業転換である。