関税に関しては、トランプは、国家経済緊急事態宣言の発令を検討しているという。国家の非常時に輸入を一方的に管理する権限を大統領に与える「国家緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいて、広範囲な一律関税を法的に正当化する方針だという。

 トランプは、関税こそ最も有効な武器だと公言しており、巨大な大統領権限を行使する意向である。

日欧の連携を

 このようなトランプに対して、自由な先進民主主義国はどのように対応するのか。基本は、ヨーロッパと日本の連携である。

 先述したように、ドイツやフランスの主要な政治家は、トランプ発言を批判している。これからも、EUやNATOの加盟国から不満の声が高まるであろう。

 自由な先進民主主義国は、アメリカによる安全保障に大きく依存している。それは、ロシアや中国の軍事的脅威に対向しなければならないからである。

 しかしながら、核兵器については、イギリスやフランスは中距離核を保有している。それはモスクワには届くのである。つまり、ロシアがフランスやイギリスを核攻撃すれば、必ず、モスクワに核で反撃できるということである。

 基本にはアメリカに対する不信感がある。ロシアが英仏を核攻撃したときに、アメリカが核で反撃してくれるとは信じていないのである。ニューヨークやワシントンやサンフランシスコを犠牲にしてまで、アメリカが英仏を守ってくれるとは思わない。そこで、自前の核兵器を持つという発想になる。

 ヨーロッパは、核兵器以外の通常兵器の開発にも余念が無いが、それはアメリカ製の武器が使えなくなることを想定すれば当然である。その他の先端技術についてもそうである。

 日本としても、アメリカ製品が輸入できないときに、ヨーロッパ製品を使うという選択肢がある。たとえば、旅客機で、アメリカのボーイングが駄目なら、ヨーロッパのエアバスがある。アメリカの原発が駄目なら、フランスの原発がある。このように、ヨーロッパという選択肢があることは、日本の国益にかなう。次世代の戦闘機は、日本、イギリス、イタリアで共同開発しているが、それも好ましい事例である。

 日本とヨーロッパが連携すれば、G7の中で多数派である。トランプ政権のようにアメリカ第一主義を推進する政権と対峙するには、日欧の緊密な協力が不可欠である。

 トランプは、政権に就いたら「24時間以内に」ウクライナ戦争を終わらせると豪語していたが、それを「6カ月以内」と軌道修正した。ウクライナ戦争がどのような形で停戦になるのか、それは、自由な先進民主主義国、とりわけ陸続きのヨーロッパにとっては大きな意味を持つ。日欧が協力して、トランプにブレーキをかけねばならないケースが多発するであろう。

 日本国民が内向きになって、国際社会の動向に関心を持たず、思考停止している。たとえば、中国に行きもしないで、ステレオタイプ化したイメージで現状を想像しているが、それを政策立案の基礎にするのでは、国益は守れない。日本の国際的地位が低下の一途を辿っているのは当然である。マスコミの責任も大きい。