トランプ政権の発足を間近に控え、原油価格は3カ月ぶりの高値水準となっている。足元では寒波の影響が大きいが、2025年は予測不能の「トランプ砲」の影響で原油市場は混乱しそうだ。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=73ドルから75ドルの間で推移している。9日には一時75ドルを超え、昨年10月以来3カ月ぶりの高値を付けた。
「寒波の影響で暖房用の需要が増える」の観測で買いが優勢になっている。トランプ政権の誕生で市場のセンチメントも改善しているようだ。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ロイターは7日「OPECの昨年12月の原油生産量は前月比5万バレル減の日量2646万バレルだった」と報じた。減少は3カ月ぶりのことだ。
アラブ首長国連邦(UAE)の生産量が油田のメンテナンスのため前月に比べて日量9万バレル減少したことが主な要因だ。イランの生産量も日量7万バレル減少した。
ブルームバーグも7日「OPECの12月の原油生産量は前月比12万バレル減の日量2705万バレルだった」と伝えていた。ロシアの生産量は日量897万バレルと同国の生産目標を下回ったとしている。
OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは12月、原油価格を下支えするため、増産の開始を4月に延期している。
バイデン米政権は、トランプ政権発足前にロシアへの制裁を強化するため、西側諸国が定めた価格上限の1バレル当たり60ドルを超えたロシア産原油を運ぶタンカーに対する制裁を計画している。ロイターによれば、ロシアの石油企業2社、100隻を超えるタンカー、ロシアの保険企業などが対象となる見込みだ。