二通りある難民の受け入れ方式

橋本:難民の受け入れ方は、大きく分けると二通りあります。1つは「自力でやって来る方式」(待ち受け方式)です。自力で本国の迫害を逃れて、他の国にやってきて難民として申請するケースです。「庇護申請者」と呼ばれる方々は基本的に、この自力で逃れてくる人たちです。

 ロシアによるウクライナ侵攻以降、多くの国がウクライナ避難民用の特別な一時保護の枠を作りましたが、これも「自力でやって来る方式」(待ち受け方式)の一形態と言えます。

 もう1つは「連れて来る方式」です。迫害を免れるために、とりあえず隣国に避難したけれど、そこも難民であふれている。あるいは、その国も不安定な政治経済状況にある。そこで、最初に入った第一次庇護国から、さらにより裕福で安定した国へ、国連機関の推薦や支援を受けて移動するという形です。

 拙著で触れた「第三国定住」は連れてくる方式の伝統的な形です。

──先進国の政府は、「待ち受け方式」よりも「第三国定住」を好むと書かれています。

橋本:受け入れ国からすると、いつ、どこから、何人、どんな人がやってくるのか分からないのが待ち受け方式です。でも、来てしまったら、前述の「ノン・ルフールマン原則」があるので追い返すわけにはいかない。入管当局からしたら、個人情報や数があらかじめ分かっているほうが必要な予算を立てて準備がしやすいわけです。

 また、自力でやって来た人だと、もしかしたら危険な人である可能性も否めません。これに対して「第三国定住」の場合は、事前に国連によるスクリーニングがされており、いろいろな情報が分かっているので安心という面もあるのです。

──北欧の国々では、むしろ「脆弱な難民」を優先的に受け入れてきたと書かれています。