難民が先進国よりも途上国で保護される理由
──UNHCRが世界中の難民申請されている方々の人数や内容を把握して、どれくらいの数を受け入れてほしいと各国に交渉しているのだと思っていました。
橋本:実は、私はそうしたやり方を充実させるよう提案しています。というのも、不公平なことに、全世界の難民のおよそ7〜8割は常に、先進国ではなく途上国で保護されています。欧州にボートで難民が押し寄せる写真や映像などが報道されますが、あのようなケースはごく一部です。
難民がむしろ途上国に集まるのには理由があります。「難民をたくさん受け入れて、国際機関からの支援金を期待しているのではないか」「どうせ国境管理がきちんとできていないのだろう」といったシニカルな憶測も耳にしますが、研究が進むにつれ、そうではないことが分かってきました。
一つは、難民は多くの場合、一次的には近隣国に避難します。たとえば、南スーダンの難民はまず、周辺のアフリカの国々に避難する。また、同じ部族や宗教などの人が難民になると、近隣国が「同じ仲間なんだから」ということで積極的に受け入れるケースもあります。
アフリカなどは多くの国が植民地として支配された歴史があり、国境線の引かれ方が地形などを無視したおかしな区分けになっています。宗主国が強引に引いた国境線によって、分断されてしまった部族などもいて、片方の国で戦争があれば、隣の安全なほうの国にいる部族は、危険なほうにいる仲間たちを受け入れる。
部族や宗教でつながった人たちが、国境を越えて困っている仲間たちを受け入れるということが、特に植民地支配を経験した途上国で起きているのです。でも、貧しい国のほうが負担を強いられるというのは「ねじれ現象」と言えます。
──難民の受け入れ方の異なる方式についても説明されています。