難民認定されると、その扱いはどう変わるのか?
──昔アメリカで、難民の申請をしているけれど、まだ難民と認定されていない人に出会いました。その方が「難民になれたら楽なのだけど」と呟いていました。
橋本:大事なポイントです。国際条約上の難民として認められると、多くの権利において最も優遇された外国人と同等に扱われます。つまり、難民と認められれば、他の外国人と比べてかなり保護され、受け入れ国からもさまざまな支援が与えられるのです。
これに対して、難民申請をしてもまだ難民と認められていない人の中には、「不法滞在者」と同等の法的地位しかない場合もあります。そうした方々に対する権利や支援は限定的です。
──難民保護を論じる上で極めて重要な原則に、「ノン・ルフールマン原則」があると書かれています。
橋本:これは難民(である可能性がある人)を、その人が迫害を受ける危険がある国に追い返してはならないという原則です。ホロコーストの時にユダヤ人を追い返してしまった苦い経験があり、失敗を繰り返さないために作られた原則です。
──本書を読んで、難民の認定には時間がかかるという印象を受けました。
橋本:その人がどんな迫害を受けてきたのかは、ほとんどの場合、本人にしか分からず、証拠を出すのは容易ではありません。例えば、本国で監禁され、拷問を受けている写真や映像などまずありません。
自分が実際に本国で大変な状況の中にあったことを証明するような証拠や、そのような危険が将来的にあるという説明資料を作り、国の機関に提出する必要があります。こうした資料を用意する作業だけでも時間がかかります。
世界的に、条約難民と認定されるのは申請者の30%前後が平均です。審査をする側が何かを見落とし、難民と認定すべき人を認定できなければ、申請者を命の危険にさらしてしまう。かといって、濫用されるケースなどを見逃してもいけません。
審査は慎重に行われ、何度も面談があります。審査の結果、認定が出なければ、異議申し立てが行われ、再審査に入ることもあります。