ネット世論が前回の衆院選と異なる動き、新たな有権者層を形成か

谷原氏:結果は相関係数0.83の見事な右肩上がり。X上の人気と衆院選での勝ち具合がほぼ連動していたということです。つまり、ネット世論と実際の世論がリンクしていたことになります。

出所:谷原つかさ・立命館大学産業社会学部准教授
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 ただし、これはあくまで表面的な相関であり、因果関係を表すものでないことには注意してください。つまり、ネット上で人気だったから得票数が増えたと言えるわけではありません。

 さらにいえば、比例得票数で見ると、自民党は1458万票、国民民主党は617万票です。いまだ2倍以上の差をつけて自民党に投票した人が多いことにも注意してください。

 前著「『ネット世論』の社会学:データ分析が解き明かす『偏り』の正体」の2021年の衆議院選挙時の分析では、X上で自民党への批判が圧倒的に多かったものの、結果は自民党が多くの議席を獲得。X上の意見というのは偏りがあって限定的で、ネット世論と世論は一致していなかったという話をしました。ただ今回の選挙の結果を受けて、風向きが変わってきたように思います。

ネット上で若年代を中心に新たな層、真っ当な議論重視

──なぜ前回と今回の衆院選でネット世論の動きが異なったのでしょうか。

谷原 つかさ(たにはら・つかさ) 1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。国際大学GLOCOM客員研究員。専門は計量社会学、メディア・コミュニケーション論。東京大学経済学部卒業。中央官庁勤務を経て、2022年慶應義塾大学大学院社会学研究科より博士号(社会学)を取得。2018年関西社会学会大会奨励賞、2024年社会情報学会論文奨励賞を受賞。著書に『〈サラリーマン〉のメディア史』(慶應義塾大学出版会)、『消費と労働の文化社会学』(共著、ナカニシヤ出版)など。

谷原氏:ネットで情報収集し、さらにX上でツイートなどもし、かつ投票もするという新しい層が若年層を中心に形成されてきたことが背景にあると考えています。

 日テレの出口調査による年代別比例投票先では、国民民主党が20代で26%、30代で22%とトップでした。現に、国民民主党の玉木雄一郎代表は「ネットドブ板」と言い、自身のYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」でも数年前から積極的に発信したり、ABEMA PrimeやReHacQといったネット上で影響力のあるメディアにも頻繁に出演したりと、ネット上で有権者に細かく接触する姿勢を見せていました。

 各党の代表(党首)ごとに、ネットでの影響力を分析したグラフが次の図です。