(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
トランプ氏当選は劇薬が待望された結果か
第47代アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏の当選が決まった。
事前にはカマラ・ハリス副大統領との接戦が伝えられていたが、あっけないほどに過半数以上の当選人獲得が決まり、トランプ氏は投開票当日に勝利宣言を行った。
普通に考えれば、世界とアメリカの動向について、現在の政策の延長線上で理解できなくなる蓋然性が高く不確実性が増すことが懸念されるが、トランプ当選直後からNYダウ平均株価が高騰し、最高値を更新している。
一般に政治と社会の不確実性の向上は不安定性や予測の不確実さから忌避されがちだが、少なくとも短期的に市場は好意的に受け止めたといえそうだ。
ある意味当然で、現在の延長線上にある近い未来予想図が暗澹たるものであるとするなら、変化を歓迎する向きがあったとしてもおかしくない。
膠着するロシアによるウクライナへの軍事侵攻を起点とする戦線、イスラエルを中心に緊迫する中東情勢も出口がみえない。
アメリカ経済は好調だと評価されているとしても、急激なインフレは一般的な生活者は言うに及ばず低所得世帯にとってそれほど好ましいものだとも思えないから、トランプという劇薬を持ってしても変化が待望されているのかもしれない。
もちろんハリス氏が大統領に就任した場合にも女性初の大統領など変化は明らかだったが、人々が求めていたのはより強い劇薬だったのだろうか。