世界が経験してきた混沌の途を歩むことになるか
政治におけるネットの存在感も増すばかりである。2024年東京都知事選挙における「石丸現象」は記憶に新しい。
筆者は石丸氏と仕事を重ねてきたが、石丸氏の人気は「ネットが押し上げた」などという表現では表しきれないほどに凄まじい。予告なく東京の離島を訪ねたときなどにも、現地の人やたまたま居合わせた観光客が石丸氏を見つけるや否や次々に集ってくるのである。
その熱量といったら他の政党や政治家からはとんと感じられないものである。
衆院選や現在までに至る国民民主党の躍進も著しいが、国民民主党もネットやSNSの利用に積極的である。ネットが選挙における決定的な勝利の要因と呼ぶまでには至らないと見るが、逆にネットを使わない選挙運動や政治活動も考えにくくなりつつある。
それほどまでに日本の政治の風景においてネットや動画が欠かせない存在になったことは明らかである。
政治とカネの問題などで信頼を失ったのは自民党、公明党だけではない。
自民党は比例票を500万票以上、公明党は100万票以上失ったが、野党第一党の立憲民主党はおよそ4万票しか伸ばせていない。
躍進したのは、国民民主党を含め(ただし、維新を除く)少数政党である。日本保守党が3議席、参政党が3議席を獲得したことなども注目に値する。
自民党は2010年綱領で「国民政党」から「保守政党」へと看板を掛け変えた。国民全体からの支持を自ら求めなくなったのである。こうした流れのなかで、左右のより極端な思想が新しく政党の形を纏うことになったと見ることもできるだろう。
どうだろう。奇妙なまでに2010年代後半の欧米における政治、経済、社会のイシューと重なって見えてこないだろうか。
もしかすると我々は「トランプ2.0」を目にしながら、日本社会が踏み入れようとしている「新しい世界」は、2010年代にすでに世界が経験してきた途かもしれない。実にポスト真実的である。