リベラル派上院議員の声明「トランプ氏の当選は驚くにあたらず」
次の4年間、政治と外交、経済をはじめさまざまな分野において多くの変化が生じるものと目されるが、同時にアメリカと世界にとってはトランプ氏を大統領に迎えるのが二度目の経験であることも重要かもしれない。
我々が初めてトランプ大統領を見たのは2016年のことであった。だが80年代の名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなどで劇画的に描かれたように、長くある種の成り上がり的アメリカン・エリートとして認識されていたとしても、まさか大統領になることを見越していた人はそれほど多くはないはずだ。
それだけに当時は随分驚きを持って受け止められた。選挙戦での物言いや、すでに実はオバマ政権の時代には世界の警察としての負担を背負いきれないことを明言していたにもかかわらず、具体化したのはトランプ政権だった。
同盟国にも負担増を求め、アメリカの自国の利益を当然のものとして求めていく姿は、冷戦終結を経てから長く続いた、唯一の覇権国家アメリカを中心とした世界秩序であり、常識の終わりと、公人としての物言いや振る舞いなどに関してある種の規範の底が抜けたことを世界中に思い知らせることになった。
当時、「ポスト・トゥルース(post-truth)」、訳して「ポスト真実」という言葉が流行したのを覚えている人はいるだろうか。
直訳すれば「脱真実」という言葉で名詞だが、日本では「日本では「『客観的事実」が重要視されない時代とその雰囲気」といったニュアンスで主に名詞的に使われた。
この言葉は2016年に「The Oxford Dictionaries Word of the Year 2016」に選出されている。念頭に置かれているのは、トランプ大統領の当選と、イギリスにおけるEU離脱の国民投票の可決である。
双方の世論形成に、ロシアによる偽情報大量拡散などの介入があったことが指摘されるなど、現在につながる課題も指摘された。
この間、日本はどうだったか。当時の安倍総理はトランプ大統領当選後、就任式以前にトランプ氏と異例の会談を持つなど関係構築に務めた。
その後も良好な関係構築に成功し、世界中がトランプ大統領に翻弄されるなかでも、ファーストネームで呼び合うトップ外交が功を奏し、良好な日米関係が保たれたのみならず、安倍元総理が外交成果で世界から称賛されるなど相思相愛の仲だったと目されている。
トランプ大統領の任期は1期4年にとどまり世界は安堵したかに思えたが、さらに4年を経て、民主党のバイデン大統領が高齢などを背景に次の大統領選挙に出馬しないことを表明するなどやはり異例の展開を経て、トランプ氏が大統領に再び返ってきたのである。
この間にアメリカの状況はますます分断と格差、混迷が進んでいる。「絶望死」に関する著作の邦訳も相次いだ。
アメリカにおいて、アルコール中毒や薬物の過剰摂取、痛み止めの慢性処方(「オピオイド危機」)などによる死が広がっていることの総称が「絶望死」である。
確かにトランプ大統領は支離滅裂だったかもしれないが、民主党政権も明らかに打ち手に欠いた。人々の期待と信頼を集めるに至らなかったといえる。
トランプ氏の当選を受けて、アメリカの上院議員で、リベラル派のオピニオン・リーダーでもあるバーニー・サンダース氏がXで公開した声明は印象深い。
ぜひ、本文にも目を通して欲しいが、簡潔にまとめれば、「トランプ氏の当選は驚くにあたらず、民主党は白人労働者階級のみならず黒人はラテン系のそれらにも見放され、人々は怒り、変化を求めた。アメリカにおいて富は偏在し、平均的な労働者の生活は貧しくなり続けている。テクノロジーは進化し生産性は向上しているのに、子どもは親世代より貧しくなり、他国と比べて医療にもアクセスし難い。民主党は現実から学んだだろうか」といった主旨の投稿である。