世界の食通が日本の地方の魅力を発信してくれている(写真は北海道、Pixabayからの画像)

食通の間ではミシュラン以上の信頼性

 前回書いた鶴岡市のように、日本の地方の豊かな食資源を使って町おこしに成功したところはこれまでもいくつもあったが、ここ十数年の増加ぶりには驚かされる。

 その背景にインターネットの普及があることに異論はないだろう。

 かつては人知れぬ地方でコツコツと料理を作っていたシェフが、インターネットの普及で、一人の食いしん坊(フーディー)に見出され、ネットで拡散され世界中に知られるようになる。

 どんな田舎であっても、世界中のフーディーが訪れるようになる。

 彼らが来ることで、そのレストランの周囲の魅力的な場所も発見され発信されることで、地域全体が有名になったからである。

 その傾向はネットの情報量がかつてと比べて数万倍となった2000年周辺からの「ブログの時代」で強まってきたといえる。

 食に限らずどのジャンルでも、人気ブロガーが選別した情報が「正しい情報」として扱われ、世の中に大きな影響力を持ち始めたからだ。

 なかでもフーディーは、当初は金持ちの道楽のように扱われたきらいもあったが、良い情報を発信すれば企業からの開発案件や講演依頼など、様々な仕事が生まれ、経済的に豊かになることができるようになった。

 レストラン情報を発信することが、いまでいうユーチューバーのような仕事になり、好奇心旺盛な幅広い人々が世界中の食を追いかけるようになったのである。

 では世界的なフーディーたちは、どんなところから情報を得ているのだろうか。

 世界の飲食関係者にとっていまやミシュラン以上に信頼性を得ているといわれるものに「世界のベストレストラン50」がある。

 英国で『レストラン』という専門誌を発行するウィリアム・リード社が主催したランキングで、文字通り、世界中のレストランをランク付けして発表している。

 発表会場は毎年変わるが、年に1回、ランキング発表のイベントが開催される。

「世界のベストレストラン50」の上位に入ったレストランには予約が殺到し、メディアにも多く登場するだけに、いまや世界のトップレストランは、ミシュランガイド以上にここで上位に入ることを念頭に置いている。

 そして、そのランキングを決める際に、世界のトップフーディーたちが重要な役割を担っているのだ。

 というのも、ランキングを決める審査員は世界各国から選ばれた1040人だが、「シェフやレストラン関係者」「フードライターなどのジャーナリスト」に加えて、「いわゆるフーディーと呼ばれる食通たち」が投票に関わるからである。