日本のレストランも3つがランクイン

 しかも審査員も一定数が毎年常に入れ替わり、18カ月以内に実際に行ったレストランにしか投票できないため、世界中を飛び回って食べられる人しか審査員にはなれない。

 審査基準はシンプルで「あなたにとってベストレストランとは?」というもの。

 ただし、レストランによるメッセージ発信力や社会貢献性などが重視されることも特徴である。

 日本のチェアマンを務める中村孝則さんによると、「おいしいのは当たり前で、その上で何が体験できるのかが求められている」という(朝日新聞&「世界のベストレストラン50」に見る、美食のこれから:中村孝則さん、2018/08/31より)。

 現在は「アジアのベストレストラン50」「ラテンアメリカのベストレストラン50」などエリア分けしたランキングも派生しており、日本のレストランもランキングの上位にはいくつも入っている。

 2024年6月に発表されたランキングで世界1位となったのは、スペイン・バルセロナの「ディスフルタール」。

 日本は3軒がランクインし、最高位は15位の「セザン」(東京)、以下21位「フロリレージュ」(東京)、32位「傳」(東京)と続く。

 それに先立ち3月に発表されたアジアベスト50では、セザンとフロリレージュが1位、2位にランクされ、50軒のなかに東京や大阪、福岡などから9軒がランクインした。

 セザンはその後発表されたミシュランガイド東京でも3つ星に輝き、その実力は内外にとどろいた。

 だが、世界のベストレストラン50は母数の大きさからも、東京をはじめとした大都市のレストランが多くノミネートされている傾向にある。

 そのため、地方のレストラン情報を求めるフーディーが参考にしているのが、2021年から英字新聞・ジャパンタイムズが行っているレストランセレクション「Destination Restaurants」なのである。

 最近、ここに食べに行くためだけに訪れる価値のあるレストランのことを「デスティネーションレストラン」と呼ぶようになっている。

 その源流が「Destination Restaurants」なのである。

 このアワードは、「日本の風土の実像は都市よりも地方にある」と考えること、また、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」こと、「既存のセレクションとの差別化を図る」ことから、特に日本の地方にあるレストランに限定して選んだもので、選考対象から「東京23区と政令都市を除く」を除くという徹底した方向性で、地方レストランを発掘している。