意味深長な「改憲草案」の中身
国防軍の議論は、10年以上前の2012年4月に公表された自民党の「日本国憲法改正草案」がベースで、石破氏は党憲法改正推進本部起草委員会の委員の1人として改憲草案の作成に携わり、その中身には絶対の自信を持っている。
最大の見どころは「第2章 戦争の放棄」内の第9条部分で、主題を「戦争の放棄」から「安全保障」へと変更した。
自衛権による武力行使を是とする考えのため、「戦争の放棄」のままでは都合が悪いと考えたのか、「戦争しないと強調しつつ、自衛なら武力を使うというのは矛盾している」との批判をかわそうという意図がにじみ出ている。
ただしそのままでは「では戦争は認めるのか」と内外から突っ込まれることも警戒してか、カッコ書きで「平和主義」も添えるなど、かじ取りは絶妙だ。
第9条1項はマイナーチェンジにとどめ「戦争放棄」の文言は存続する。続く第9条2項は特に注目で、現行憲法で高らかに謳う「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を全削除。
新たに「自衛権の発動を妨げるものではない」との一文を挿入し、前項(第1項)で「国権の発動としての戦争放棄」「武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争の解決手段として不使用」と強調しつつ、「自衛権の行使は除きますよ」との“ただし書き”をさらりと付けた。
これらを踏まえ、次に5項目からなる第9条の2を新設。いよいよ真骨頂の「国防軍」を明文化する。
・第1項:わが国の平和・独立と国・国民の安全確保のため国防軍を保持し、総理大臣が最高指揮官
・第2項:国防軍は国会承認その他の統制に服する
・第3項:国際社会の平和と安全(いわゆるPKO)や公の秩序維持、国民の生命・自由を守る活動ができる
・第4項:国防軍の組織・統制・機密保持の関連事項は法律による
・第5項:審判所の設置
続いて第9条の3(領土等の保全等)では「国民と協力して、領土、領海、領空を保全」と規定するが、これも意味深長な内容だ。