2024年11月3日、全日本大学駅伝、駒大の7区・篠原倖太朗(左)からたすきを受けるアンカー・山川拓馬 写真/共同通信社

(スポーツライター:酒井 政人)

吉田響がまたしてもスピード区間を爆走

 國學院大が初優勝を遂げた全日本大学駅伝。チームでは目標に届かなかったが、“個”で強烈な輝きを放った選手がいた。まずは出雲駅伝に続き2区を任された創価大・吉田響(4年)だ。

 出雲では区間2位に32秒差をつけるダントツの区間賞。今回も自ら志願して“スピード区間”の勝負に臨んだ。

「30分台を目標にしていました」という吉田は、トップと2秒差の3位でスタートすると、佐藤圭汰(駒大3)が持つ区間記録(31分01秒)の更新を目指して突っ走った。

 1区で大差がつかなかったため、吉田を先頭に10人ほどの選手がトップ集団を形成したが、徐々に人数が削られていく。5kmは13分52秒ほどで通過。7km過ぎからは青学大・鶴川正也(4年)との一騎打ちになった。

 残り500mほどで5000m13分18秒51のスピードを誇る鶴川に引き離されたものの、追いつき、前に出る。最後はわずかに先着を許して、区間賞争いも鶴川に1秒敗れた。それでも後続に41秒差をつけるインパクト抜群の走りを披露した。

全日本大学駅伝2区、競り合う青学大の鶴川正也(右)と創価大の吉田響 写真/産経新聞社

「向かい風がきつくて後半は持ちませんでしたね。でも前に出させたら勝てないと思っていたので、最後まで自分が絶対前で走るんだという気持ちでした。今回は後ろを引き離してトップで渡すことができなくて、すごく悔しいです」

 本人は納得していなかったが、最後まで競り合った鶴川が「本当に吉田響君は強くて、引っ張ってもらうかたちになりました。ラストは引き離したのにもう一回きて、こんな選手見たことない」と絶賛するパフォーマンスだった。

 スパート合戦に負けた吉田だが、次は得意とする上りで勝負する。「自分は4年間、『山の神』を目指してきたので、5区を68分台で走って、区間記録(69分14秒)を塗り替えたい」と最後の箱根駅伝で“神”になるつもりだ。