貿易戦争からウクライナまで国外リスク山積
国外では、ほとんど遠慮せずに貿易戦争を始める可能性がある。その相手には隣国のカナダやメキシコも含まれるだろう。
大統領は軍の最高司令官であるため、戦地への部隊派遣に消極的な姿勢を示唆するだけで北大西洋条約機構(NATO)への関与を無意味にすることもあり得る。
以前にもましてデリケートなこの時期に、気候変動問題についてのすべての合意から再び離脱することもないとは限らない。
国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった機関の活動をはるかに困難にする恐れもある。欧州中の極右勢力を支援することもあり得る。
ウクライナを見捨てることもあり得るし、恐らくそうするだろう。
20世紀の民主主義の要塞の行方
世界に及ぶ影響をすべて考慮する際、上記のような行動の直接的影響と、ホワイトハウス返り咲きの間接的影響とを区別しなければならない。
後者でとりわけ重要なのは、権力を握りたがっている右派ポピュリスト――とりわけ欧州の右派ポピュリスト――の勢力が意を強くすることだろう。
20世紀の民主主義の巨大な要塞である米国が権威主義者の手に落ちたとなれば、権力はもとよりイデオロギーの信頼性の面でも、世界のバランスはリベラルな民主主義に不利な方向に大きく傾く。
何と言っても、米国はどれほど不完全であろうとも、世界の大部分にとって法治民主主義の秩序のお手本になってきた国だ。
その国でトランプが2期目を務めることが選択されれば、それは非常に重要な出来事となる。
トランプは少なくとも「ファシスト的」であり、信頼に足る形でファシストと呼ぶことができる。
トランプ政権1期目に大統領首席補佐官として最も長く仕えたジョン・ケリー海兵隊大将はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、「私見だが、トランプはファシストの定義を満たしていた。認められるのであれば独裁者のように統治するだろう。合衆国憲法も、法の支配という概念も全く理解していなかった」と語ったと伝えられる。
さらに、「(トランプは)自分が世界最高の権力者ではないという事実を決して受け入れなかった。しかもその権力とは、自分がやりたいことを好きなときにできるという意味だった」と語っている。