(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年10月16日付)
米国大統領選挙の勝者を当てる賭けに乗ってはならない。
オッズがあれほどまでに接近すると、わずかな儲けを狙うためにかなりの金額をリスクにさらす必要があるからだ。
しかし、選挙が終わっても米国の分断の程度は変わらないか否かという賭けなら、大金を投じてもいいだろう。
勝者がドナルド・トランプになろうとカマラ・ハリスになろうと、接戦になっているのは米国の深刻な二極化のためだ。
米国の有権者の大多数は、かなりの覚悟をしなければ投票先を変えることができない。そして国民の半数は選挙の勝者をインチキ呼ばわりすることになるだろう。
今回はブルックス・ブラザーズ暴動では済まない
米国大統領選挙がこれほどの接戦になるのは2000年以来だ。
今日に比べれば、当時はまだ穏やかだった。それでも、フロリダ州での票の再集計は連邦最高裁による物議を醸す判断で決着した。
同じような争いが今年起きたら果たしてどうなるか想像してみてほしい。
2000年には共和党の男性党員らがスーツ姿でマイアミ州デイド郡の集計所に押しかけて再集計を阻もうとした「ブルックス・ブラザーズ暴動」があったが、今年は問題の生じた選挙区に民兵が集まる。
今では投票集計の兵器化が米国の特徴の一つになっている。
11月5日に実現しうる4つの結果のうち、昔ながらの米国統治をもたらしてくれそうなのは1つだけだ。
それは、ハリスがホワイトハウスを勝ち取り、民主党が連邦議会上院での過半数を維持しつつ同下院の過半数も取り戻すパターンだ。
民主党がすべてを押さえれば統治を再開することが可能になり、トランプが選挙の敗北に異議を唱える余地も制限できる。
だが、これは最も実現しそうにないシナリオだ。
大統領と下院の選挙がどうなるかは、ふたを開けてみなければ分からない。今回の上院の選挙は民主党の改選議席が多く、共和党に有利になっている。