(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年10月8日付)

イスラエルの軍事行動に抗議してイスラエルと米国の国旗を踏みつけるテヘラン市民(10月8日、写真:AP/アフロ)

 イラン・イスラム共和国に終わりが近づいているのだろうか。

 国民の人気がなく、イスラエルの攻撃にさらされ、最高指導者は85歳と高齢なイランの現政権は脆弱なのかもしれないと思える。

 2022年に始まった反政府デモは容赦なく鎮圧され、数百人が路上で撃たれ、数千人が投獄された。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランの反体制派に接触しようとしている。

 イラン相手に軍事行動を起こすという脅しをかける一方で、「ほとんどの人が思っているよりも早い時期に」自由がイランにもたらされると予言している。

イランのレジームチェンジは世界の利益か?

 ネタニヤフ氏に言わせれば、イランのレジームチェンジ(体制転換)は世界全体の利益になる。

 現体制が国際社会における有害な勢力であることは明らかだ。ハマス、ヒズボラ、フーシ派といった暴力的な民兵組織を支援している。

 シリアの独裁者バシャル・アサド大統領にも決定的に重要な軍事支援を提供し、ウクライナとの戦争に使うためのミサイルをロシアに提供した。

 ネタニヤフ氏は米国で影響力のある人物だけに、その主張は必然的に共和党右派の間で取り上げられつつある。

 だが、今回はそこだけではない。

 フランスの有力紙ル・モンドは、あるフランス外交官が次のように語ったと報じている。

「ひょっとしたら、イスラエルが我々を歴史的な瞬間に導いているのかもしれない・・・(中略)イランの政治体制の終わりの始まりという瞬間だ」

 抽象論としては、あのイスラム共和国の崩壊は西側民主主義陣営にとって歓迎すべき展開のようにも思われる。

 イラン、ロシア、中国、北朝鮮で構成される「敵対国の枢軸」なるものの協力関係にますます懸念を強めているところだからだ。

 またイランに政治的自由が戻ることは、この国が世界経済に再統合されることも意味するだろう。