軍事介入が現体制を強化する恐れ

 しかし、現実世界では、イランの「レジームチェンジ」を望む勢力に細心の注意を払うべきもっともな理由がある。

 第1に、レジームチェンジをどのように実現させるのかという問題がある。

 イランでは現体制に対する抗議行動が過去にも何度か沸き起こっており、多くの人々が殺害されたり投獄されたりしている。

 現体制が崩壊してくれればと淡い期待を抱きつつイランやその主要インフラを爆撃することは、説得力を著しく欠く戦略でもある。

 イスラエルや米国が軍事攻撃を行えば、国内の反体制派を支援するどころか、かえって現体制を支えることになりかねない。

 愛国心の強いイラン国民が意見の違いを乗り越えて結束し、外国からの攻撃に抵抗するという旗下結集効果を引き起こしてしまうからだ。

 米国の介入は特に逆効果になりかねない。

 1953年のイランのクーデターを後押しするうえで米国と英国がどんな役目を担ったか、教育を受けたイラン人なら誰でも覚えている。

 仮にイランの現体制が何らかの過程を経て崩壊したとしても、現体制よりも良い体制が登場する保証は全くない。

 中東ではここ数十年、多くの独裁政権が権力の座を追われているが、輪をかけて抑圧的な政権がその後を継ぐケースが少なくない。

 1979年のイラン革命でシャー(皇帝)が国外脱出を余儀なくされた時もそうだった。