(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年11月11日付)

お金第一主義の米国を後々の歴史家はどのように評価するのだろうか(Foto-RaBeによるPixabayからの画像)

 もう何年も前に、シリコンバレーの有名な大富豪から絶対に忘れられないことを聞いた。

「中国は専制政治国家であり、欧州はテクノクラシーであり、米国は企業だ」というのがそれだ。

 ドナルド・トランプが先週の大統領選で再選されて以来、その言葉はかつてないほど真実味があるように感じる。

 明らかなポイントから始めるといい。

 それはトランプがとりわけ貪欲なビジネスマンであること、そして米国のリーダーシップが売買される「資産」であることだ。

米国政治を支配するダークマネー

 非営利団体シチズンズ・ユナイテッド対米連邦選挙管理委員会(FEC)裁判での2010年の最高裁判決によって選挙陣営に対する無制限の企業献金への扉が開かれて以来、特にその傾向が顕著になっていた。

 だが、今回の選挙の最中に、候補者とそのスーパーPAC(政治活動委員会)とを隔てる残りの規則がさらにいくつも覆された。

 その結果、今回の選挙に費やされたと伝えられている史上最多の160億ドル近い資金のうち、数千万ドルないし数億ドルが身元の明かされていない献金者のお金だった。

 米国の政治を支配するのは、ただのお金ではなく、ダークマネーだ。

 それでも、米証券取引委員会(SEC)への提出書類に記される企業の大株主と同様、トランプに投資している最大の政治的株主はかなり知られている。

 そうした投資家の一人が、米テスラの共同創業者で、トランプ陣営に1億1800万ドル献金した起業家のイーロン・マスクだ。

 この政治献金の大部分は、選挙戦の最終盤に全米各地で住宅を訪問して回る人員に費やされた。

 だが、マスクはそれ以上に価値の高いものも提供した。

 米国で最も知名度の高いソーシャルメディアの一つに数えられるX(旧ツイッター)を支配するアルゴリズムのブラックボックスがそれで、Xは間違いなく、数知れない潜在的な投票者を誤情報の底なし沼に陥れた。

 生活費について心配している哀れな激戦州の有権者を同情するといい。

 彼らは今、多くの専門家がインフレを格段に悪化させると考えている人物を大統領に選んだ。