トランプに投じられた票が意味すること

 もちろん、イーロン・マスクやティモシー・メロン、スティーブン・シュワルツマン、ジェフ・ヤス(中国の字節跳動=バイトダンス=の大株主としても知られる富豪)といったトランプ支持派の大富豪や、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、ティム・クックなど、いち早く次期大統領への祝意をツイートした好意的な人たちは、何を手に入れるかはっきり分かっている。

 何事も取引として考える、自分と同じくらい打算的な指導者だ。

 彼らは例えば、過去の約束が未来の業績の指針にならないことを知っている。

 これが真実であることは、トランプの勝利を受け、株式とリスク資産が上昇する一方で債券価格が下落した金融市場の反応に如実に表れていた。

 何しろこれは、全面的な輸入関税と米国製造業への支援を約束した人物だ。

 本来であれば、これは輸出競争力を高めるために米国株とドルが下落することを意味するはずだ。

 ところが、投資家は正反対の展開に賭けているのだ。

 一部の米国人は、ジョー・バイデンが経済政策立案のポスト・ネオリベラル時代の到来を告げたという夢を抱いた。

 だが、ここへ来て、米国は1980年代以来ずっとそうだったように株主の「価値」がすべてであることが明らかになった。

 トランプに投じられた票は、低税率と規制緩和、債務増加が、米国経済(コロナ禍後にどんな豊かな国よりも劇的に好調だった経済)をもっと素晴らしいものに変える「成長」を生み出すという考えに対する一票だった。

 重力に抗う行為によって株価が現在の記録的な高値で保たれ、(コロナ下での一時的な落ち込みを割り引いた場合)歴史的な基準に照らすと何年も前に起きているべきだった景気後退を避けられることへの一票だ。