トランプとファシズム
1930年代と1940年代の欧州史を専門とする一流の歴史学者ティモシー・スナイダーにとって、ファシズムとは「理性よりも意志を礼賛することであり、『大きな嘘』のなかでの暮らしだ。政治が指導者への崇拝に変わること、すなわち『大きな嘘』を語り、かつ自分は自らの意志によって社会を統治するべき人間なのだと認めさせる能力のある指導者への崇拝に変わることだ」という。
また著名な専門家アン・アップルバウムは、トランプが政敵を「害虫」呼ばわりしたと付け加えている。
これもまたファシスト(そしてスターリン主義者)に特徴的な表現だ。
ハイチからの移民がペットを食べているという先日の「血の中傷」も、一部の人々を人間以下の存在だと貶めるファシストの特徴と符合する。
トランプの人気は、バイデン政権の失敗(特に移民の制御の失敗)を考慮すれば説明しやすくなる。
だがそれでも、米国による共和政の偉大な実験の中核原理を放棄してしまうことは理解しがたい。
この実験の成功は、建国の父ジョージ・ワシントンが始めた慣例に負うところが大きい。
米アトランティック誌でトム・ニコルズが指摘しているように、ワシントンは大統領を2期務めて故郷に戻った。トランプは反ワシントンだ。
ワシントンが高潔さで知られている分野において、トランプはその正反対の評価を得ている。
だからこそ、今が本当に運命的な瞬間となる。
(文中敬称略)